佐川光晴「家族芝居」

文藝春秋
2005年2月 第1刷
230頁


「おれのおばさん」の前編ということでこちらを先に読んでみました

医学部希望のアキラ
北海道大学に合格したものの、東京へ行け!父親の強い勧めで東京の大学を目指すことになる
物語の中心は
東京で暮らす年の離れた従兄、善男が経営するグループホーム「八方園」に住まわせてもらいながら、従兄の手伝いと勉強を続けるアキラの視線で描いた笑いあり涙ありの日常です

バツイチ、元役者、毒舌家の善男と八方園で暮らす7人の老婆たちとのバトル
初めは面食らうアキラも次第にその生活に馴染んでいきます
テメエら死ね~!のようなことばかり言う善男ですが、何故か老婆たちの絶対的な信頼を得ているのです
老婆たちのうちの一人が亡くなるのですが、身内からは引き取れないという連絡が…
善男の発案で無理やり実行される八方園ならではの野辺送りには感動しました

他の施設の職員のつくり笑顔に善男が憤慨する場面にはナルホド、と思いました
介護士をしている人に聞いてみたら、お年寄りの大半は世話をしてくれる相手の心内をちゃんと感じ取るのだそうです

真摯な心で向かってくる相手には心を許し残り少ない人生を託す
そういうものなのでしょう
相手が家族や親族でなく他人であるのは悲しいことかもしれませんが…


善男の父親、アキラの両親、善男の別れた妻(この人が、おれのおばさん、だそうです)、善男の新しいお嫁さん、八方園の向かいに住む老医師etc
今後、どの人物を中心においても別の「家族」物語が生まれるのではないかしら
そんな期待を持ちました