藤沢周平「蝉しぐれ」

 

文春文庫

1991年7月 第1刷

2011年10月 第65刷

解説・秋山駿

464頁

 

 

舞台は海坂藩

ひとりの少年藩士、牧文四郎の成長物語です

 

 

冒頭

南西の方角から流れ下る水系

流れは蛇行しながら北東に向かう

という表現に馴染めず海坂藩の風景を思い描くことが出来ませんでした

私の暮らす太平洋側では川は北から南に流れるものなのでピンと来なかったのです

そこを何とか捻り倒してほとんど一気読みでした

 

 

藩の政争に巻き込まれ切腹を申しつけられた父

若干15歳で父の遺骸を一人自宅まで運ぶ文四郎の気丈さには恐れ入ります

隣家の娘・ふくとの淡い恋

反逆の罪により牧家は家禄を四分の三に減じられ住まいも長屋に移されますが、年月が過ぎ藩の勢力図が変わり始めると文四郎の周囲にも色々な変化がみられるようになります

牧家の惣領として成長していく文四郎の姿には清々しさが残ります

 

 

 

タイトルにもなっている蝉しぐれ

文四郎の立つ場所と共に幾度も描かれ、夏の木立の中五月蠅いとしか思えなかった蝉しぐれが美しいBGMのように思えてくるのが不思議でした

全体にソフトな印象ですが素晴らしい作品だと思います

ただ、個人の好みの問題かもしれませんが終章だけは余分、又は他にも描き方があったのではないでしょうか